ヘッドフォンのSTAXイヤースピーカー - STAX/スタックス

インタビュー

 

100%手作業です

STAXオフィス
STAXオフィスのシャッターをパチリ

埼玉県入間郡三芳町。
何の変哲もない、いやむしろ、のんびりとして静かすぎるぐらいの小さな町である。

その平和な住宅街の中に、どこにでもあるような小さな工場がぽつんと佇んでいる。
あまりに目立たない存在なため、同じ町内に住んでいるもの以外は
特に気にも留めない存在かもしれない。
まさか、この工場から世界中のトップクラスがこぞって使用する最高級品、
世界最高峰の名品が産み出されているだなんて、だれも思いもしないだろう。

STAXイヤースピーカーに魅せられ、その音の素晴らしさや名品然とした存在に
感動すら覚えていた私たちは、ぜひ
この製品を作っている人に直接会って話を聞きたい、そして
かたくなに独自の道を追求し続けているその心を知りたい、と
小さな町の小さな工場を訪ねた。

まずお話を伺ったのは代表取締役の目黒陽造さん。

「作っている最中に不良品というのがたくさん出ましてね…」

と持ってきていただいたのは、小判のような長円形の金属板2枚と、
その間に挟まれることになる振動膜(ダイヤフラム)。
これがコンデンサー型ヘッドフォンの核となる部分。

簡単にその仕組みを説明していただく。

「この2枚の金属板の間に振動膜をサンドイッチ状に挟みます。
この仕組みがコンデンサーなものですから、コンデンサー型と呼んでいます。
コンデンサーというのは『蓄電機』と訳されます。
『電気を蓄える』ということですね」

●コンデンサー型のヘッドフォンというのは、
STAXさんだけで出されているものなんですか?

「ヘッドフォンではSTAXだけになります、今では。
今から十数年前までは、いろんなメーカーが(コンデンサー型の)
いろいろなものを出していたんです。
STAX以外に日本でも3社ぐらいありましたね。
でもみなさん、採算が合わないとみえて、どんどん撤退していったんです」

●最初にこのコンデンサー型を開発したのがSTAXさんだったと
カタログで拝見したのですが?

「ええ。日本で初めてヘッドフォンにコンデンサー型を導入したのはSTAXです。
この原理そのものは、ドイツだったと言われていますね。
で、スピーカーが作られて…」

●コンデンサー型のスピーカーというのもあるんですか?

「ええ、それが最初になります。それをヘッドフォンに応用したのは
STAXが初めて、ということですね。
コンデンサー型のスピーカーというものがドイツで作られ始めて
日本にも入ってきたんですが、これがあまりに巨大なものだったんです。
畳1枚ぐらいの大きさがあったんですね」

●そのスピーカーは、STAXさんのヘッドフォンと仕組みは一緒だったんですか?

「仕組みはまったく一緒です。こういうサンドイッチ状になったものです。
それが畳1枚の大きさでした。いかに大きなものだったかお分かりですよね。
しかも結構重いですしね。そんな大きなものは、
なかなか普通の方ですと買えませんよね(笑)。
だいたい邪魔もの扱いされてしまう。

そんな訳で、ヘッドフォンにすれば非常にいい具合になる
ということでSTAXが始めたんですね。
で先ほども申し上げたようにいろんなメーカーが参入して来たんですが、
ことごとくみなさん撤退していかれまして、
今ではもう私たちだけになりました」

●そんなに他のメーカーがすぐ撤退してしまうのはなんでなんでしょうか?

「それは、結局は作るのが難しい。
そして非常に神経質。
作る過程においてはゴミを嫌って湿度を嫌う。
そんな訳でみなさん『作ってられない』ということになったんだと思います。
これ作ってみたらわかるんですが、
非常〜に原価が高いんですよ。
この膜そのものは1円にもならない。ところが
これを張るのにものすごく時間と労力がかかるんですよ」

●じゃあほぼ手作業的な感じなんですか?

「100%手作業です」

●100%ですか!?最初から最後までですか?

「はい、そうなんです。
機械の力を借りなければいけないところはですね…
この膜はサランラップの1/10ぐらいの厚さなんですね。
だいたいサランラップが15ミクロンぐらいだから
これは1.5ミクロンほど。で、
こういうものは大企業しか作れませんから、
最初は巻いてある状態なんです。
それをグ−ッと引っ張ってきて枠にはめて、
360°方向に均一に張らなければいけない訳です。
これが大変なんです」

●すぐ破れちゃうんですか?

「そうですね。均一に引っ張らないと、
どこかに弱い部分ができてしまいます。
そうなるともう使い物になりません。
不良品扱いとなってしまいます。
で、一度出来たものを測定するのですが、
共振という現象を使う部分で初めて機械を使うんです。
張った後に、ある周波数で共振するようにして、
それを目で見ると、おかしな部分はすぐわかります」

●確認自体は目で行うわけですか?

「そう、目で確認します。
正しい位置で固定するところまで出来てから、
熱を加えて…だいたい8時間ぐらいかかります。
そこからまた1週間寝かせまして(笑)」

●!。1日でだいたい何個ぐらい作れるんですか?

「作るときには30個ぐらいは作っちゃいますけどね。
でも作ってからすぐに出荷できるという訳じゃないんです。
結局、全部人間がやらなければいけませんから、
それだけ人件費もかかる。
寝かせる時間も当然かかる。
という訳で、とにかく手間ひま、時間がかかって、
それによって結果的にお金もかかってしまうんです。
原価は本当に高くなってしまうんですよ」

 

『こんな音まで録音されていたのか』というところまで聴くことができる。

STAXの目黒さん

●それは原材料費が高いというよりも、
人件費などで高くなってしまうということですか?

「原材料費自体は高くないんです。
そのかわり手間がかかる。
そこが大手メーカーが撤退していった理由でしょうね。
これでまだ作りやすかったらいいんですが、
作りにくいときたもんですから(笑)」

●それぐらいコンデンサー型というのはデリケートなものだと思いますが、
音として聴いた時にダイナミック型と比べて、ここがポイント
という点はどういうところなんですか?

「ここまで手間ひまかけても我々が生き延びられてるというのは、
それだけ買っていただくお客さまがいらっしゃるということです。

ダイナミック型と最も大きく違うところは、
ひとことで言うと『音像の分解能の違い』です。
『音を分解する力』。

電気信号を、空気中の音波に変えなきゃいけない、
その時にスピーカー、ヘッドフォンが必要になるわけですが…。

例えばバイオリンとトランペットとベース
という楽器からなる楽曲があったとして、
これをひとつずつ、どこまでキレイに再現するか?ということです。
BGM的に聴くなら、まぁなんでもいいということになりますが、
オーディオマニアの方なんかになると、神経質に
音の隅々まで細か〜く聴こうとするんですね。

そうすると音の粗が見えてくる。
それをコンデンサー型で聴くと細かいところまで聴こえてくるんです。

『こんな音まで録音されていたのか』というところまで聴くことができる。
一番は中高域の細かな音、ここがダイナミック型と大きく違うところです。

それを可能にするのは何かっていうと、この膜の薄さにあります。
膜が薄いってことは軽いということです。
軽いということは、少しの力だけを加えても動きやすい、
ということです」

●は〜なるほど。それだけ微妙な音もとらえやすいということですね。

「そういうことです。
細かな音を再現するためには、この薄さが必要となるんですね。
普通のダイナミック型になりますと、だいたい
この膜の部分に紙を使っていることが多いんですね。
できるだけ各メーカーとも軽い紙を使おうと努力しているんですけど、
コンデンサー型のこの膜とは比べ物にならないぐらい分厚いですよね。
100倍から200倍くらい違います」

●STAXさんは60年代からイヤースピーカーを作られてきましたが、
今はCDの時代になって音を再現する手段が変わってきているんですけど、
アナログのレコード針からの音の拾い方の方が適しているのか、
CDというデジタルなものも得意としているのか、を教えていただきたいのですが。

「どちらか、というと今のCDの方に向いていると思います。
CDの方がダイナミックレンジが広いものですから。
マニアの方だと、逆にとらえられる方も多いんですけど、
実は逆でございまして…。

逆という言い方は違うかもしれません。

実はCDの発売に合わせて、途中で変更になってるんです。
ドイツの当時のダイムラー・ベンツ(現在のダイムラー・クライスラー)から
特別な依頼がありまして、
『もう少しダイナミックレンジに耐えられる
イヤースピーカーを作ってほしい』と頼まれたんです。

それまでアナログ用として作ってた時は、
この膜と両端の金属の間に230Vという直流電圧をかけていたんですね。
両サイドの金属の部分にはプラスとマイナスのオーディオ信号
というものを加える仕組みになっています。
そこに大きな電圧をかけることによって静電気を発生させるんですね。

静電気が発生するとこの両サイドの金属が
お互いに反発して引っ張り合うようになるため、
真ん中の膜が振動するわけです。
その静電気を発生させる直流の電圧を、
それまでは230Vという大きさでかけていたんですが、
ダイムラーからの依頼によって580Vに変更しました。
倍以上の電圧ですね。
この大きさの電圧をかけると振幅が大きくなりますが、
大振幅に耐えられるものを作ったんです。
そうしたらちょうどCDのダイナミックレンジの高さとピッタリきたんですね。

という訳で、いまのイヤースピーカーはアナログよりも
むしろCDの方に適していると言えます。
ダイムラーも、このイヤースピーカーで
何を聴いてるのか分からないんですけどね…(笑)。

想像ですが、たぶんエンジンの雑音を聴いているんだと思うんですよ

おもしろいですねぇ、
雑音聴いてエンジンの開発をするっていうんですから。

で、今年になって、国内の自動車技術部会というのが主催となって
各自動車メーカーとオーディオメーカーが集まったんですが、
そこで『ヘッドフォンを使って
車内の騒音をチェックしよう』ということになったんですよ」

●ほぉ〜。そうやって音楽を聴く以外にも色々な用途で使われているんですね。

「そうですね。
普通のダイナミック型では聴こえてこない音を聴こうとすると
『これじゃないとダメなんだ』と」

●あとはNHKなどでもSTAXさんのイヤースピーカーが
使われているとお聞きしましたが、
放送局ではどういう場面で使われているんでしょうか?

「えーとですねぇ、FM局なんかでは
たぶん音楽を聴いてるんじゃないかなぁと思うんですよね。
ただ放送センターとかスタジオでは、たぶん
雑音を聴いてるんじゃないかなぁと思うんですが…。

正確にはどこも教えてくれないんですよ。 ただ、
音楽や放送の内容を聴くんでしたらプロデューサーが使うはずですが、
実際使っているのは技術屋さんなんですね。

だから何か放送関係の…う〜ん教えてくれないからわかんないんです(笑)」

●(笑)なんか、出してはいけない音とかをチェックしてるとか…

「そうかもしれないですよね。
でも具体的には何をチェックしてるのか分かりませんねぇ」

●では、一般の音楽リスナーの方も、当然これを買われるわけですが、
お客さんの層みたいなものはあるんでしょうか?

「昔は年配の方が多かったんですけど、
最近は年齢はバラエティに富んでますね。
意外と若い方も多いので我々もビックリしてます。

ただ一様に…これは語弊があると思いますが…
みなさん『音キ×ガイの一歩手前』の人が多いです(笑)。
非常に研ぎすまされた感覚をお持ちで。

実を言うと私はSTAXの前に2つのオーディオメーカーの勤務経験があって、
それぞれのメーカーにファンの方というのはいるんですが、
STAXの場合はまた別格ですね。

もう、ちょっと音に関してクエスチョンがあるとすぐに返されてしまいます。
そういう神経が研ぎすまされた方も満足させなければいけませんから」

●コンデンサー型の命が『普通では聴こえない細かい音を拾う』ということだとしたら、
目黒社長は、その『細かい音を拾って聴く』という行為は、
どの程度音楽を聴く際に拡がりを与えることになると思いますか?

「音楽を聴く上でなぜそこまで必要か?ということですね。

それはまず『そこまで音が入っているから再現して当たり前』
というのが1つありますね。

もう1つは音の立ち上がり、立ち下がり、
つまり音の応答速度(過渡特性)を上げることができるというところ。

それからもうひとつは生演奏の演奏会場が新しくなってきているということですね。

以前はステージと客席の間に緞帳(どんちょう:ステージ上の幕)
というものがありましたが、今はなくなってきてます。
ステージが客席の真ん中にあったりしますね。
緞帳があった頃は、
緞帳の上というのは全部音が抜けていたんです。
観客にはその抜けた音は聴こえなかったんです。
今はそうじゃない。
全部聴こえてくるわけです。

サントリーホールなんかはステージの真上に反響板が付いていて、
全部跳ね返ってきます。
観客にすべての音が聴こえるようになっているんですね。

そういう音を再生するためには
細かな音まで忠実に拾ってあげる必要が出てくるというわけです。

と、まぁここまでが性能的に必要とされているだろう、という部分ですね。
じゃあ音的にはどうか?というと歪みが極端に少ないということです。

アンプなどは元々歪みが少ない機器ですが、
スピーカーは歪みが大きいものがたくさんある。
STAXの場合はアンプ以下の歪みしかありません。
一般のスピーカーと比べると1/100の歪みです。

では『音楽を聴くのになんで必要なんだ』という最終的な質問に答えると…
あの〜今話したことを含めて、
『じゃあ音楽的に豊かなものが聴こえるか』というと
ちょっと疑問符がついてしまうんですね。

これで再生したらどんな音で音楽を聴くことができるようになるかというと、
あの…『何の魅力もない音』ってことになるんです、STAXの音というのは

解像力を極端にあげていって、歪みも極端に小さくしていくと、
そこに何があるかというと『自然界の音』になっちゃうんですよ。

風が吹いて草が揺れれば「サヤサヤサヤサヤ」と音がしますよね。
あれは歪みゼロの音です、当然。生ですから。
それがその通り聴こえてくる、たったそれだけのことです。

あの、ハードロックみたいな音楽の
『バッシーン!ドーン!』なんて音をそれらしく気持良く聴こうとすると、
ちょっとハイ(高音)が上がっていた方がイイんです。
低域も少し持ち上げた方が気持いいんです。

一番身近なところでいうと、カラオケです。

カラオケをハイファイな音でやったら、
あれほどつまんないものはないんですよ。
アレは音を作ってあります。

前にあるメーカーにいた頃に、
私はカラオケの機械を作ったことがあるんですが、
本気になってハイファイのものを作ったら
『ダメだ』と言われてしまったんですよ。
試しに唄ってみろと言われて唄ってみたら…つまんないんですよ。
何の変哲もない音が聴こえてくる。
要は真面目に作るとつまらない音になってしまう、ということなんですね。
STAXの音はそういう音です。魅力のない音です」

 

「むしろ使い込んだぐらいの方が音的には良くなるんですよ。

STAXの鈴木さん
技術部長の鈴木さん

●(そそんなぁ…「つまらない音」「魅力のない音」ってそんなハッキリと…。
すごくいい音だと思うんですけど…と困惑気味で)。ハァ…

「その音が、逆に技術者にとっては、
音楽を楽しむ以外のところで必要な性能なんですね。

またオーディオマニアの方でも普通のマニアのレベルですと
オーディオ的なことを追い求めるんですけど、
それを過ぎてしまうと『自然界の大切さ』というものを分かってくるんですね。
そこで初めて音楽の真髄が分かる、と。
そういう音はSTAXじゃないとやっぱり再現できないですね」

●(ちょっと安心。そういうことか)。
究極は自然に行き着くということなんですね。
では、STAXさんの製品は、日本だけでなく海外の方からも熱烈に
支持されていると思いますが、海外でもやっぱりマニアックな方が多いんでしょうか?

「あんまり海外のユーザーの情報は少ないんですけど、
やっぱり日本同様に耳の肥えた方が多いでしょうね。
特にヨーロッパの方は日本よりはるかに音楽の歴史が長いですからね。
だから余計STAXの音が好まれます。

こんな話していいかどうか分かりませんが、
日本でオーディオブームが到来した時に、やっぱり先生はアメリカだったんですよね。
アンプでもスピーカーでも。

で、日本でもそれに追いつけ追いこせで一生懸命作って、
技術的には追いついたと思うんです。
でも感性は追いついてないですね。

やっぱりねぇ日本人はどうしても演歌の世界になっちゃう。
出てくる音が『短調』なんですね、哀しいんです。
それが海外だとカラッとしてる。
技術的な違いっていうより感性の違いですね。
だから海外でのSTAXの評価っていうのは日本での評価と違うんですね。
欧米系の音楽マニアにもこれだったら満足いただけるだろうと思います」

●先ほど中高域の細かい音を特によく再現するとおっしゃいましたが、
音楽のジャンルでいうと何に向いているんでしょうか?

「オールマイティーだと思います。が、
実際問題、私たちが電話などで接するお客さんは、
ほとんどがクラシックを聴いている方です。
海外でもおそらくそうじゃないかなと思いますね」

●そうではあるけれど、オールマイティーだと?

「そう思います。特に不向きなものはない、と。
ただ、さっきも言ったようにハードロックなんかだと
ハイ上がりで「バッシーン!」と鳴らした方が気持ちいいんですよ。
そういう意味ではオールマイティーという言葉は違うかもしれませんが。
『誇張する必要のない音楽』というとクラシックが多くなっちゃうんですかねぇ」

●手入れの仕方とか、長持ちさせるためには良い方法はあるんですか?

(ここで取締役技術部長の鈴木一雄さんにも加わっていただく)
「直接肌に触れる部分は汚れますから、
使用したあとに中性洗剤で拭くとか、無造作に
置いておくのではなくてカバーぐらいはかけて置いておくとか、
それだけでだいぶ違うと思います」

●丁寧にずっと使い込んだとして、どれぐらい使えるものなんですか?

「むしろ使い込んだぐらいの方が音的には良くなるんですよ。

…というのは、この膜というのは適当な強さで均一に張ってある訳ですけど、
本当に細かく見ると微妙に張りムラがあるんですよ。
それが振動の度にいい具合に均一化されていくんです。
で、普通のスピーカーというのはエッジがありますから、
そのエッジの劣化によって寿命となってしまうんですね。
しかし、STAXの場合はエッジがありませんから、個体差にもよりますが
少なくとも10年ぐらいは通常問題なく聴けると思います。
中には30年使っても大丈夫という方もいらっしゃいます」

●この四角い形というのはとてもユニークだと思うんですけど、
なぜこの形になったんですか?

「耳たぶの形に合わせて、有効的に面積をかせごうということで
この長方形の形になったんですね。

やっぱり低音の量感というのは面積が重要ですから。
それでこの大きさになっているんです。

それで、これは見かけのデザインというよりも、
非常に理屈にかなった構造なんですよ。
なぜなら発音体自体が非常に軽いので、
背面の影響もすごく大きくなってくるんです。
本当は何もないのが好ましい。でもそういうわけにもいきませんから、
強度と、いかに空気の流れをスムーズに抜けるようにするかということで、
こういう籠型を採用しています」

●ここに行き着くまでにはいろいろな試行錯誤があったのでしょうか?

「そうですね。
この形っていうのは、音質からこの形状になったと言うのでしょうか。
なかなかそれを理解していただくのが難しいのですが(笑)」

●このイヤースピーカーを通じて
『こういうことを伝えたいんだ』というモットー、
ポリシーみたいなものがありましたら教えていただきたいのですが。

「音楽というのはいろいろあって、
音楽会というのはロックのコンサートとかで
何万人という人が集まるものを想像されるかもしれませんが、
本来の『音楽会』というのはそうじゃないんですね。
それなりの音響特性というものを加味して作ったホールでないと、
STAXの本来の良さは出ないんです。

スピーカーから出てくる音を『生の音楽』と思ってもらっては困る。

やっぱり『楽器から出てくる音』、これを室内で鳴らした時の音ですね、
これの再生をどこかで経験してほしいな、と。
そうするとSTAXの良さがよ〜く分かります。

いま特に屋外でのコンサートの場合は、
解像力のめちゃくちゃ悪いスピーカーで、パワ−をぶちこんで
強引に音を出してる訳です。
あれを生の音だと思ったらとんでもない
ああいう音に慣らされてしまっている若い人が実はものすごく多いんです。

やっぱり楽器を鳴らす音、それは金管であれ木管であれ、
そこで共鳴して出てくる素晴らしいものがある。
それをアンプで増幅してスピーカーで出す、しかも
そのような(パワーだけの)スピーカーで聴くというのはナンセンスなんですよ。
やはり生の楽器の音の再現、これをうまく再生するのはSTAXしかない、と自負しております」


(平成15年10月30日、STAX本社にて収録)



〜 インタビューを終えて 〜


ヘッドフォンについて、まったくの素人だった僕達にとっては、
頷かされっぱなしのインタビューでした。

何の変哲もない工場はどこまでも素朴な雰囲気でしたが、やはり普通 じゃなかった。

途中、目黒社長の
「STAXの音は『何の魅力もない音』『つまらない音』」
との大胆な発言に、一時はどうなることかと思いました。

「これじゃ、お客さんにオススメできないんじゃん…」という不安。

しかし、実に落ち着いて平然と『つまらない音』と繰り返す目黒さんの口ぶりに、
あっけにとられたように話を聞き続けていきました。

そしてわかったその真意「自然界の音」「生の音」の大切さが語られる時、
そこにはすごい説得力がありました。
世界最高峰といわれるだけのことはある。

あぁやっぱり直接話を聞かせていただいてよかった。
素直にそう感じたお話でした。
今度はみなさんに、これを伝えていかなくては。

ぜひSTAXイヤースピーカーの素晴らしさを知ってもらいたい。

このインタビューと合わせて、僕たち自身が使ってみた率直な意見、
「レゲエで」試してみた実感をぜひ参考にしてください。


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